安易な値引きに走るその前に考えておきたい利益のこと
2015年5月15日ビジネス思考について、ブログ
あなたの商売では売上と利益のどちらを大切にしていますか?
もちろん売上が上がらないと利益につながりませんし、まずは売上が大切というのは分かります。
しかし、売上を追い求めるばかりに、利益のことをきちんと考えておかないと、売上だけでなく人件費や経費も増加する一方で、利益がぜんぜん残らないということがあります。
大企業の多くは株式会社という形態をとっており、一般投資家や他の企業の投資によって支えられているわけですから、企業規模や将来性を測る意味でも売上高というものが重要な指標の1つで、企業を評価する上で大きな意味を持つ数字です。
しかし、社長自身がその企業のオーナーであるなど、株式を一般投資家が持たないような中小企業では売上のもつ意味はあまりありません。そして、、売上よりなにより考えなくてはならないのが「利益」なのです。
なんだ当たり前のことじゃないか!と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、「利益に対する考え方」を履き違えたばっかりに自転車操業状態を作り出し、何かのきっかけで破綻に追い込まれるパターンは往々にしてあるのです。
値引きをすれば売上げアップ…だから利益もアップなのか?
経済学の基本中のキホンと言われる知識の中に需要曲線というものがあります。簡単に説明すればモノの値段が安ければ買いたい人は増え、逆に高ければ買いたい人は減るというもので、これは皆さん感覚的に理解できると思います。
では、150円で売っているジュースを100円に値引きしたら、一体どれほど売らなければならないでしょうか?
単純に1.5倍売れれば同じ売上にはなりますが、100円ならそれだけ買いたいという人はどれほどいるでしょうか?
もしどこへ行っても150円払わないと買えないジュースをあなたのお店で100円で売れば買いたいという人が押し寄せるでしょう。しかし、現実はそうではないはずです。そしてもし、売上が1.5倍になったとしても、利益は増えるでしょうか?
仮に150円のジュースが1000本売れるとします。
売上 150円 ✕ 1000本 = 150000円
利益 (150円−50円) ✕ 1000本 = 100000円
ではジュースを100円で販売して売上が1.5倍に増えたとします。
売上 100円 ✕ 1000本✕ 1.5 = 150000円
利益 (100円−50円) ✕ 1000本 = 50000円
販売価格は2/3の100円にしても1.5倍売れれば売上は変わりませんが、利益は半分になってしまいました。
もし、150円で販売する時と同じ利益をあげようと思うと…
100000円÷50円 = 2000本
なんと、2000本、売らなくてはいけません。
もし、150円のジュースを100円で売るなら、同じだけ利益を出すためには2倍売らなければならないのです。
では、あなたが今、値引きして売ろうとしている商品は値引き前と同じ利益を出すためにどれだけ販売しないといけないでしょうか?
そして、これまで利益を考慮して値段をつけてきましたか?
安くしないとモノは売れないのか?
先程、値引きをしても同じだけ利益をあげようと思えばそれ以上に販売数を稼ぐ必要があると書きました。
「高いと売れないから、安くするんじゃないか」という反論があるかもしれません。
では、あなたは安くないと物を買わないでしょうか?
例えばコンビニ、置いている商品はほぼ定価で、スーパーやディスカウント店に行けば安くで買えるものもたくさんありますが、コンビニの店舗数は右肩上がりに増えていますよね?
コンビニは24時間営業で、いつでも買い物ができるうえ、チケットサービスやATM、コピー機などを店内に設置するなど利便性を向上させています。
価格に「便利さ」に対する付加価値が上乗せされているから定価同然の高い値段でも商品が売れていきます。
他に例を挙げるなら、以前は高級料理というイメージが強かったフレンチも最近では俺のフレンチのように本格的な味でも格安で楽しめるカジュアルなお店も出現しました。
高級フレンチのお店は全く影響を受けていないかといえばそうではないと思いますが、かと言って、総倒れ…という状況ではないはずです。
俺のフレンチは価格破壊をもたらしましたし、本格的な味を楽しめるお店として支持されていることも確かです。
しかし、すし詰めの狭い店内で料理を食べなくてはならないですし、正装のサービス係が丁寧に給仕してくれるわけではありません。味は確かでも商品である料理を提供する過程でお客さんは妥協を強いられているわけです。
落ち着いてゆっくり食事を楽しめるという付加価値があるからこそ、高級フレンチのお店もいまだに支持されるわけです。
結局のところ、高い値段で売ろうと思えば何らかの付加価値が必要ですし、安く売るためには経費を削ぎ落とすために何らかの妥協を強いることになるわけです。
中小企業にとっては安売りするより付加価値をつけるほうが楽
では、あなたが売ろうとしている商品は「安く売るために無駄なものを省く」のと、「高く売るために付加価値をつける」のではどちらの努力が楽でしょうか?
「高く売るために付加価値をつける」ほうが圧倒的に楽…と言うより、そちらしか選択肢がないでしょう。
例えば工場で作られるような量産品であれば資金力のある大企業が大量仕入れによって、より安値で仕入れることが可能ですし、チェーンの飲食店なら自社農場や契約農場で食材をより安値で安定的に仕入れることが可能になります。
仕入れの時点で不利な状況なのに加え、大企業は大きな店舗や広告、ネームバリュといったものを武器にコストを抑え、大量に販売することで確実に利益を重ねることができます。
そんな状況に中小企業が太刀打ちできるのでしょうか?
量産品にマネのできないような手の込んだきちんとした商品やニッチな商品を扱うことで大企業が手を出せない分野で利益を重ねるほうが確実なのではないでしょうか?
そしてなにより忘れてはならないこと、「安売りに客は群がります。しかし、“いいお客さん”はいなくなります。」
これは、NHKのプロフェッショナルにも出演されている東京・北千住にある杉本青果店の店主の言葉です。
実は私自身も同じような経験をしたことがありますが、本当に驚くほど客の質が悪化します。
そして、更なる安売りをしなければならない“負のスパイラル”に陥りました。
もし安売りに手を染めようと思うのであればこのことも頭に入れておいたほうがよいでしょう。
知名度の低い商品を売るために
量産できないような商品やニッチな商品は認知度が低いことが多く、納得して買ってもらうためには買い手に「なぜこの商品を買ったほうがいいのか」を納得してもらわなくてはなりません。
たとえば、今でこそ有名な「今治タオル」。
私も何枚か持っていて、柔らかく吸水性が高いだけでなく、色落ちしないし傷みにくいので大変気に入っています。
でも、何も知らない状態で売り場に並べられていたら、ただの高いタオルとしか思わないと思います。
では、今治タオルのことを知らないお客さんに売ろうと思ったら、商品の良さを伝えるしかありません。
そこにはまず、使った感想や良さを伝えることも大切ですし、数あるタオルの中から今治タオルを選んでもらおうと思えば、商品パンフレットや陳列なども大切になってきます。
同じ商品でも置かれる環境や扱われ方で与える印象が変わり、説得力などあらゆる部分に影響するからです。
そこではデザインもとても重要な役割を持ちます。
CLAPでは、デザインに携わる者としてお店とお客様を繋ぐためのツールを提供していると考えています。
そして、デザインや文章のもつチカラを通じて、WEBや店頭で商品の良さや価値をお客様に正しく伝え、販売につなげて行くことが大切だと考えます。
商品の魅力をもっとお客様に伝えることができたら…とお考えでしたら、まずはご相談頂ければ幸いです。